8月1日(月)

 

 昼過ぎ,12時20分に,家族3人が友人と同僚の車2台に分乗して福岡空港に向かった。異国への旅がいよいよ始まろうとしていた。一家の大黒柱とはいえ,一抹の不安が時折脳裏をよぎったりしていた。空港に着いて,スーツケース3個と旅行バッグ2個を別送の荷物として預けた。高価なノートパソコン2台とビデオカメラ,それにデジタルカメラはすべて手荷物として担いでいた。研究室の学生と友人の総勢10数人が出発ロビーに来て壮行してくれた。みんなに別れを告げた後,安全チェックを受け,出国ゲートをくぐった。6歳の娘が無邪気に大はしゃぎしていて,これからの大変な長旅は想像もしていなかったのであろう。

 

約一時間で,飛行機は紺碧な海に浮かぶ関西国際空港に降りた。到着口を出て,妻は,次の便の出発は遅いから,まず食事をしようかと言い出した。そうしよう。左手にうどん屋があった。3人でうどん3杯を注文し,食べた。最後の日本食のせいか,私は汁までも飲み干した。実に美味しかった!それは,日本を離れる直前の生体反応であった。

 

エアカナダAC-040便はほぼ定刻通りに飛び立ち,太平洋の上空に向かった。機中で,接続の国内便に果たして間に合うのか,ずっと心配していた。ホームページから印刷したバンクーバー国際空港の見取図を取り出し,国内線出発ゲートまでの道順を頭の中にしっかりとインプットした。

 

飛行機は,定刻より30分よりも遅く,バンクーバー国際空港に降りた。前方の座席に座っていたので,3人はすぐに飛行機から出て,人混みを避けながら,暗記した道順をダッシュした。突然,家内は「国内線乗り継ぎ」という小さな看板を持つおじさんを見つけた。ほかの乗客はほとんどそれに気がつかずに,入国審査のところで大勢並んでいた。我々は,係官と簡単な会話を交わしたあと,ゲートを通り抜けた。また走り出して,AC-040便の荷物のターンテーブルに駆け寄った。なんと幸運なことに,我々の荷物が先に出てきた!荷物を押して,移民局の入り口に向かってまた奔走した。そこの門番は,荷物を外に置けと命じた。盗難を心配する余裕もなく,荷物を無造作に壁沿いにおいて,中に入った。制服姿の格好いい男がビザ申請を処理してくれた。時間がたつのは実に速かった。次のAC112便の出発時間は14:05であったのだ。「速くやってよ!!!」と願うばかりだった。しばらくすると,男は,ゆっくりと立ち上がり,悠々と別のところに行って,ホチキスの針を補充して,悠々と戻ってきた。またしばらくすると,今度はパソコンの操作が分からなかったらしく,また立ち上がり,同僚を呼んできた。同僚の説明をうなずきながら,ゆっくりと入力していた。後ろを見ると,10数人が並んでいた。彼らは,次の便には間に合いそうもなかったのだろう。男は,夫婦関係を証明する書類を求めようともせずに,家内を同伴者として認めたのであった。Thank youと叫んでから,移民局を飛び出した。荷物は,もちろん盗まれていなかった。荷物を押して,国内線のターンテーブルに預けた後,早足で出発ゲートに向かった。3人でAC112便の機内に転がり込んだのは出発時刻の10分前だった。もうヘドヘド!!!前の便とうって変わって,機内には,もうフランス語文化圏の匂いがしていた。

 

北米東部時間のよる9:45分に,定刻通りにモントリオール空港に到着した。長い通路を経て,荷物受け取りのターンテーブルにたどり着いた。荷物はなかなか出てこなかった。そのとき,なぜか,出迎えのSu助教授(私のホスト研究室の責任者)と社会人ドクター課程のWang En-Rong 氏(南京師範大学の電子工学部の学部長!)が中に潜ってきた。「あなたの荷物は,80%の確率で出てこないよ」と言い放った。えっ!まさに晴天の霹靂だった。「なーんで?」と聞いたら,「ここはカナダだよ。バンクーバー国際空港での接続は大体間に合わないのさ。今日,あなたがちゃんと飛行機に乗って来られたのは,超ラッキーだよ。トロントに回されて,翌日の昼に着く人も結構いるよ。ぎりぎりの時間で飛行機に乗り込んだだろう。荷物はついてこられないのが日常茶飯事よ」。なぜエアカナダがこんな組み合わせの航空券を売ってくれたのよ!しばらくすると,エッ!と思わず我が目を疑った。なんと私たちの荷物が前後に並んで出てきたのではないのか!よかった!

 

 Su助教授のワゴン車に,宿泊先のカラー地図を見せ,そこに連れて行くようと頼んだ。「おまえは準備周到だね」と言いながら,Su助教授は車を運転して,市内に向かった。モントリオールの街は,一方通行の道路が多く,Old Town に位置する Habitation Du Vieu Montreal を見つけるまで,一苦労をした。造りが豪華かつ綺麗なキッチン付きのFurnished apartment で,観光スポットの真ん中という立地条件に,スペースも十分であった。冷蔵庫や洗濯機までも備わった。一泊135CADだった。家族滞在にはちょうど良かった。気がつくと,腕時計の針は,現地時間の夜12:00を指していた。約24時間の長旅であった。何のトラブルもなくモントリオールにたどり着いて,ほっとした。

 

アドバイス:

これから家族でモントリオールに行く人のためのアドバイスをしておきます。

 

1.              アメリカで乗り換えると,荷物のチェックが厳しく,当日には荷物は到着しません。また,乗客の荷物のために徹夜で残業したりすることはないので,1日或いは2日遅れてくることはよくあります。電話で問い合わせても,応対は決して親切であるとはいえません。

2.              海外旅行保険によっては,荷物の遅延による損失(着替え用のパンツなどを購入した費用など)を補填してくれます。

3.              バンクーバー国際空港で,入国審査を待つ乗客の大群についていくのをしないで,ホールの右側の乗り換え客専用の入国審査ゲートを利用した方がよいでしょう。家族で初めて行って,そこで入国審査を受けてからまた国内線に乗り継ぐ場合,お母さんと子供が先に移民局で並んでおき,お父さんが荷物を取りに行った方が賢明でしょう。

4.              家族で行き,現地でアパートを探す場合, Habitation Du Vieu Montreal を約一週間予約することがお勧めです。電子メールでちゃんと予約できます。