8月3日(水)

 

 また時差のせいで早起きしてしまった.最後のアパート候補を見に行くので,一家でSu助教授の研究室に押しかけた.アポイントは午後となっていたので,午前中は日本から持ってきたパソコンのインターネット設定に取りかかった.Su助教授は「おまえは何もしなくてもいいよ.ここでは,アナリストは大勢いるよ」といって,中国系のアナリスト一人を電話で呼んできた.名前はStevenという,英語はめちゃうまかった.Stevenはあっという間に接続してくれた.そして,私はすぐに九州大学のメールサーバーのメールを読めた.素早い対応は大変ありがたい!後にわかったが,Concordia大学Faculty of Engineering & Computer Scienceでは,160人の教員に対して,40人ものアナリストがおり,各教員のパソコンの設定管理や,ネットワークの管理を担当している.教員がいないときでもマスターキーで部屋に入り,Windows のアップデートをやってくれたりする.日本の大学より大変恵まれている環境である.「俺が数年前に日本の大学に短期滞在したとき,ノートパソコンのネットワーク接続設定で大変苦労したよ.周りの人達が助けてくれたけど,プロではなかったので,トラブルがたびたびあった.こちらはいいだろう.おまえはすぐに日本にいるようか感覚でメールを出せるようになったのよ」とSu助教授は自慢げに言った.

 

昼食の後,女性のMaさんは来てくれて,一緒にアパートを見に行くことにした.「駅一つの距離のところに,目当てのアパートがあった.自動開閉のガラスドアからロビーにはいると,派手なシャンデリアがソフトな光を放っていた.ネックタイ姿のドアマンが丁重に用件聞いてくれたあと,ソファに座って待ってくれと言った.清潔でガラス張りのロビーは居心地がよかった.しばらくすると,栗色髪の50代のマダムが現れた.フランス語訛りの英語をしゃべっていて,「マダム」の呼び方にそぐわない上品な方だった.5階にある3 ½ の物件を紹介しようと一緒にエレベータで上がった.廊下には,上品に装飾された電灯が優しい光を点っていた.冷房も効いており,気持ちがよかった.10畳以上の寝室,15畳以上のリビング,カウンター付きのオール電化のキッチン,それにバストイレとベランダであった.家賃はheating込みで1090ドルだという.ベランダからの眺めも悪くはなかった.向かい側のDawson College の構内にある高い樹木が,立体感のある深緑の景色を織りなしていた.時折,ハトの大群が深緑の視野を横切ったりしていた.アパートの25階には,温水プール,トレーニングルームとコインラウンドリーがあった.一階にはコンビニストアもあった.ドアマンは24時間体制でセキュリティ監視をやっているという.

 

ここに決めた!即座一ヶ月目の家賃を払い,仮契約をした.日本を出る前に最大の懸念であったアパート探しはそれで成功裏に終わった.それで,胸をなで下ろした.